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僧侶「ひのきのぼう……?」その2

420:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:19:40.91 ID:UW5dTRYB0
――――――――――――――――――――

【魔王城・B1F】

僧侶「いてて……」

僧侶(やっと揺れが収まった……)

僧侶(それにしてもよく助かったなぁ、僕。持ち物も全部無事だったし)

僧侶(途中で放り出されて、あちこち振り回されて、転がって……)

僧侶(あ、でも、まだ助かったわけじゃないか)

僧侶(あっちこっち瓦礫の山で道が塞がってる。もうこの城からは出られないかも……)

僧侶(勇者たちは、ちゃんと脱出できたかな)

僧侶(そうだ、勇者は魔王を倒したんだった!)

僧侶(良かったなぁ、ホントに良かった。勇者は、見事平和な世の中を取り戻したんだよ)

僧侶(それに比べて僕はダメだなあ)

僧侶(ここまで駆けつけときながら、結局何の役にも立てずに右往左往だよ)

僧侶「よっと」 パッ パッ

僧侶「とにかく、出口を探さなきゃ」 ――
僧侶「ひのきのぼう……?」その1  
僧侶「ひのきのぼう……?」その2    






424:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:20:25.48 ID:UW5dTRYB0
――

僧侶「ふう。ダメだ。出れない」

僧侶(どこも通路が崩れちゃって先に進めないや)

僧侶(残ったのは……)


   ヒュオオオオオ…


僧侶(この……地下へ続く、長い階段だけかぁ)

僧侶(偶然見つけたけど、これ、きっと隠し階段だよね。狭いし、暗いし)

僧侶(城壁が崩れた影響で、階段口が表に晒されちゃったんだ)

僧侶(気は進まないけど……僕がこの城から出るには、降りるしかないか)

僧侶(この先に、外に繋がる『旅のとびら』があることを期待して……)

僧侶(外に……出て……)

僧侶(……)

僧侶(まあ後のことはいいや。今はとにかくここを降りてみよう)

カツーン   カツーン   カツーン   カツーン   カツーン  ……




430:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:21:00.63 ID:UW5dTRYB0
【魔王城・B10F】

――カツーン   カツーン   カツーン   カツーン   カツーン

僧侶(結構長いなぁ……先も暗くてよく見えないし……)

・ カツーン
・    カツーン
・       カツーン

【魔王城・B20F】

僧侶(大きならせん状になってる……いったいどこまで続くんだろう)

・        カツーン
・     カツーン
・  カツーン

【魔王城・B50F】

僧侶「――ちょ、ちょっと休憩」

僧侶(まさかこんなに長いなんて……もう、何階分ぐらい降りたんだろ……)

僧侶(行き止まりが待ってたら、心が折れそうだな)

僧侶(ううん、僕は簡単に折れないぞ。何たって僕はこの、『ひのきのぼう』なんだから)

僧侶「……よし、休憩終わり! 行こう!」




433:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:21:49.61 ID:UW5dTRYB0
――

【魔王城・B75F】

――カツーン   カツーン   カツーン   カツーン   カツーン

僧侶(……階段を降り始めて、何時間くらい経ったかな)

僧侶(今ごろ勇者は、王様に会って、町の人たちから祝福されてるのかな)

僧侶(僕もその中に混じって、勇者たちみんなを労いたかったな)

僧侶(『おめでとう』『おつかれさま』『ありがとう』。かけたい言葉は盛りだくさんだ)

僧侶(でも僕は追放されちゃったから、もう城下町には入れないんだ)

僧侶(……だから勇者に会うチャンスは、もうここ、魔王城しかなかったけど……)

僧侶(間に合わなかったなぁ。急いだんだけど、仕方ないよね)

僧侶(ううん、僕が出しゃばったら、かえって皆を危険な目に合わせたのかもしれない)

僧侶(魔王は倒されたんだ。ってことはつまり、僕が間に合わなくて良かったんだ)

僧侶(僕って肝心なところでドジ踏んじゃったり、運が悪かったりするけど)

僧侶(今回だけは運が良かった。最後に間違えなくて、よかったよかった)

  カツーン   カツーン   カツーン   カツーン   カツーン ――




435:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:22:05.81 ID:0udmmsLt0
地下75階wwwww




438:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:22:37.17 ID:UW5dTRYB0
【魔王城・B99F】

――

僧侶(うーん……行けども行けども、同じ風景ばかり)

僧侶(そろそろ疲れてきたかも……ん?)

僧侶「あっ!」

僧侶(明かりだ! しかもこの青白い明かりは……!)

 ズズズズズズズズズ……

僧侶「やっぱり!」

僧侶「『旅のとびら』だ!」

僧侶(やっぱり抜け道はあったんだ。ここまで降りてきた甲斐があったよ)

僧侶(……でも)

僧侶(こんな地下深くにあるなんて……一体どこに繋がってるんだろ)

僧侶(ううん、ここまで来たら、どのみち僕に選択肢はないんだ)

僧侶「……行こう!」

僧侶は 旅のとびらに 飛び込んだ! ―― ▼






443:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:23:10.54 ID:UW5dTRYB0
――

――――

――――――

僧侶「うわああっ!」

 ドシャッ

僧侶「いてて……」

 

【??の間】

 

僧侶(腰を打っちゃったよ……とびらの先が底抜けになってたなんて……)

僧侶「……あれ? ここは?」

僧侶(外じゃないな。まだ室内みたいだけど)

僧侶(……やけに広い……?)

**『何者だ』

僧侶「!?」






455:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:23:47.44 ID:UW5dTRYB0
僧侶(広間の奥に、大きな扉――)

僧侶(その前に、何かが座っている!)

僧侶(あれは……魔導師系の魔物?)

僧侶(ローブに覆われてて、顔がみえないけど……)

僧侶(いま思念波で話しかけてきたのは、あの魔物?)


**『何者だと問うておる』


僧侶「! 僕は」

僧侶「僕は僧侶。ここには、迷った果てに行き着いたよ」


**『僧侶? 人間か!?』

**『なぜ人間がこのような場所に』

**の そばに 二つの 赤い水晶が 浮かび上がった! ▼


僧侶「!」

僧侶(何をする気だ……?)




465:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:24:31.49 ID:UW5dTRYB0
**『……』

**『……なるほど』

**『ここへは、確かに偶然迷い込んできたようだな』

僧侶「!」

僧侶「お前はいったい――」

**『!? 南の陸地から渡ってきたのか!?』

**『あそこには、魔王軍の精鋭を配置していたはずだが……』

**『出し抜かれたというのか……こんな小僧一人に……』

僧侶「!」

僧侶(僕の過去が見通されてる? しかも魔王軍ってことは、やっぱり敵?)

僧侶(とにかく、このままやらせたらまずい気がする)

僧侶「お前は!」

僧侶「お前は一体、何者なんだ。僕はちゃんと名乗ったよ」

**『……良かろう、他に聞く者もなし……人の子よ、傾聴するが良い。我こそは』

**『我こそは、真なる魔王である』




480:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:26:02.57 ID:UW5dTRYB0
僧侶「な……なんだって」

僧侶「だって魔王は、勇者が倒したはずだよ!」

**『それは誤りではない。確かに魔王は最上階での決戦にて、勇者に敗れた』

僧侶「……魔王は、二人いたってこと?」

**『是とも否ともいえる。ただ真なる魔王は、我にして唯一』

**『我の他に魔王と称されるものがあったとて、それは虚偽なる写し身に過ぎぬ』

僧侶「じゃあ、勇者が倒した魔王は、偽物だっていうの?」

**『いかにも。あの魔王は、長きに渡る時を経て、我が育んだ究極の生物』

**『幾多の同胞を糧とし、驚天動地の成長を遂げた我が軍の切り札――その名は「魔界樹」である』

僧侶「『まかいじゅ』……? でも魔界樹って、『じんめんじゅ』の上位亜種じゃ……」

**『左様な下等の魔物とは別種のものだ。そも、規模の桁が数段異なる』

**『あの魔界樹は数十年前、我みずからの手で種子より育て上げたものだ』

僧侶「魔王が偽物の魔王を育てる? いったいどういう……」

**『……ククク……退屈しのぎには丁度よい。一幕の下りに人の子と語らうも、また一興』

**『良かろう。貴様には、全てを話してやろう――』




481:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:26:05.29 ID:gUk4a04v0
だから魔王魔王言ってたのかあいつは




486:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:26:49.26 ID:UW5dTRYB0
**『我は魔界にて生を与えられし時、伝説の宝具「ラーの鏡」と同質の力を備えられた』

**『すなわち数多の過去、そして真実を見通す、赤き眼睛である』

僧侶「真実を見通す……眼?」

僧侶(僕がここに来るまでの経緯がバレたからには、本当にそんなものがあるんだ……)

**『さて――これまでの魔族が世の征服に失敗している以上、我も同じ轍を踏む訳にはいかぬ』

**『我は世を支配するに当たりまず、先代、先々代の過去を覗き込んだ』

**『すると滑稽なまでに、ほぼ同じ経過を辿っていることが分かった』

**『天の導きによって人の中から「勇者」が定められ、その者に魔王が討ち果たされる、とな』

僧侶「……」

**『魔族は……いかなる強大な力を持とうとも、どれだけ魔王軍を拡大しようとも』

**『終極には必ず、伝説の武具をまとった勇者に討たれる』

**『魔族の歴史は物語っていた。天の定めし勇者に、魔王は決して勝てぬと』

**『矜持を重んじる我にしてみれば到底受け入れ難い、非情な史実であった』

**『宿願を成すためには、勇者と真正面から衝突しては敵わぬ。……叶わぬ――』

**『我は歳月をかけて考えあぐねた挙げ句……一つの方策にたどり着いた』




490:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:27:35.91 ID:UW5dTRYB0
**『天界の目を欺けば、魔族が敗れる宿命に抗えるのではないか』

**『我自身の代わりを立てれば、因習を断ち切るきっかけになるのではないか』

**『偽の魔王を勇者に討たせれば、定めを歪ませるができるのではないか――』

僧侶「……そのニセの魔王っていうのが」

**『そう。件の「魔界樹」である』

**『天を欺くほどの力を持つ、新たな魔王を創造する。我はこの壮大なる計画を実現するために』

**『従来の魔王のように自身を高めることも、魔王軍を増強することも捨て』

**『「魔界樹」の種を育て上げることに、多くの資と時を費やした』

**『この、天界の目の届かぬ、地の果てでな』

僧侶「……」

**『――時は流れ、我はついに「魔界樹の花」を咲かせることに成功した』

**『もはや言語を発し、呪文も行使できる。魔界樹は成熟相当の力を得ていた』

**『我はこれを以て契機とし、この「魔界樹の花」を魔王に見立て、地上に芽吹かせた』

僧侶「……でも、その魔界樹は勇者に倒された」

**『ククク……あわよくばといった、多少の自信はあったのだがな』




493:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:28:34.10 ID:UW5dTRYB0
**『だがそれも想定内であった。むしろその流れこそが本命』

**『かくして、魔王が勇者に討伐せしめられる慣習は、成立したのだからな』

**『そして、我はここに在る。すなわち天界の目は誤魔化せたということだ』

僧侶「! で、でも」

僧侶「苦労して育てた魔界樹は、もう勇者に倒されたんだから……」

**『魔界樹はまだ滅んではおらぬ』

僧侶「!!」

**『……この魔王城の主柱は、魔界樹の一部であった』

**『その主柱は勇者らによって崩され、魔王城陥落を招いたが――』

**『柱の内側に伸びていた物は、魔界樹の「幹」である』

**『本体である「根」は、今もなお脈打っている。根ある限り、魔界樹は幾度となく再生する』

僧侶「……そんな……」

**『なお魔界樹には、優れた学習能力がある』

**『一度勇者と戦った記憶は、先刻、魔界樹の「根」に深く刻みこまれた』

**『我の知る限り「魔界樹」は、同じ相手に二度遅れを取ったことはない――』




496:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:29:17.11 ID:UW5dTRYB0
**『また、魔界樹は急速な成長を遂げている』

**『我による手も施せば、次にその花が咲くまで……五年とかからぬ』

僧侶「!」

**『五年の後。魔界樹は最強の魔物となりて、再び地上に顕現する』

**『その際には、温存していた我が魔王軍も、魔界より一斉蜂起する』

**『その時こそ人間共は終焉を迎え、我が魔族の完全支配が実現するのだ』

僧侶「五年……たったの五年……」

**『ククク。丁度よい頃合であろう』

**『一時の平和に耽り、幸福の絶頂を迎え、魔族の脅威を忘れかけた人間共を』

**『唐突に闇に包み、ふたたび絶望の淵に落とし込むには、ほどよい年限だ』

**『特に勇者は、小娘であったことが大きい』

**『五年も経てば、何者かと結ばれれておるやもしれぬ』

**『子宝でも儲けていようものなら、確実に全盛より劣っていよう……』

**『ククク……その折は絶望の味もひとしおというもの……』

僧侶「そんなことはさせない」




499:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:29:50.34 ID:UW5dTRYB0
僧侶は ひのきのぼうを かまえた ▼

 

僧侶「話は分かったよ」

僧侶「僕は、僕にできることをする」

**『ほう? ここに至り、何を目指すというのだ』

僧侶「みんなに伝えるんだ」

僧侶「ここから地上に出て、勇者に、まだ戦いが終わってないことを伝えるんだ」

**『ククク……添えておくが』

**『貴様が最後に通った「旅のとびら」は、片道限り。ここから逃れることはできんぞ』

僧侶「まだ道は残されてる。お前の、後ろにある扉だ」

**『ほう。仮にこの先が行き止まりであれば、どうする』

僧侶「それでも、ここから外へ出る方法を手当たり次第に調べて」

僧侶「それでも無理なら、上に穴を掘ってでも抜け出すんだ」

**『……ククク……ハッハッハッ』

**『面白いことをのたまう小僧だ。実に興味深い』




500:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:29:55.61 ID:DRtWSBIk0
檜キター




507:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:30:54.01 ID:UW5dTRYB0
**『小僧よ』

**『我が配下に加わらぬか?』

僧侶「えっ」

**『貴様が相応の力を持っていることは分かっておる』

**『その貧相極まりない武装で、その足で毒沼を伝い、ただ一人ここまで辿りついたのだ』

**『さらにあの地点には、地上への先遣隊の本隊を配置していた』

**『勇者共の誘い水も兼ねた、猛者揃いだ。それを単騎で破る人間など、そうそうおるまい』

僧侶「……やっぱりあの陸路は……」

**『ククク……察しも良いようだな。なお気に入ったぞ』

**『いかにも。あの港町に続く路は、我が故意に敷いたものだ』

**『当然、魔王軍が本格的に大陸へ侵攻するための足がかりでもあるが――』

**『知っての通り、あの毒沼の道の果てには、我が居城へと続く「旅のとびら」がある』

**『これは万一、勇者たちがこの城に辿り付けなかった際の、保険の意味で設けたものだ』

**『勇者たちには、この時機に「魔王を討伐する」役回りを為してもらいたかったゆえにな』

**『クク……まさか一人で乗り込むような強靭、かつ酔狂な人間がいるとは思わなかったが』




512:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:31:31.93 ID:UW5dTRYB0
**『話を戻そう』

**『小僧よ、いま一度問う。我が配下に加わらぬか?』

**『その歳であれば、将来、我が側近の候補に選ばれるのも夢ではない』

**『その際は――』

**『地上世界の半分をくれてやろう』

僧侶「……!」

**『軽口ではないぞ。五年後には必ず、地上は魔族の物となる』

**『与えられた地の支配者となれば、目に映るもの全ては思いのままだ』

**『名誉も栄光も。金銀財宝も。愛しき者も何もかも、全ては貴様の自由』

**『貴様はここで生まれ変わり、新たな生涯を得るのだ。どうだ? 悪い話ではなかろう』

僧侶「悪い話だよ」

**『ほう?』

僧侶「それだと、みんなが幸せになれない」

僧侶「僕だって、絶対に幸せになれない――」

**『ククク……その口はいささか軽率ではないか? 自身のこれまでの旅路を鑑みてみよ』






517:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:32:12.21 ID:UW5dTRYB0
**『貴様の過去は、多少覗かせてもらったぞ』

僧侶「!」

**『いたる所で煙たがられ、冤罪をこうむり、重ね重ね憂き目に遭う』

**『貴様自身が気付かなかった欺瞞や悪意も、数えきれぬほど見受けられた』

**『畢竟、貴様は自らの居場所を失い……最後の理解者までも失うこととなった』

僧侶「……」

**『貴様が味方しようとしている人間共は、貴様に何を施した?』

**『貴様が守ろうとしている世界は、貴様に何を報いた?』

**『貴様が仮に、これから為そうとしていることを為したとて――』

**『どれだけの見返りが得られるというのだ?』

**『貴様自身の「未来」はそこにあるのか?』

僧侶「……」

**『さて、それらを踏まえた上で問おう。これが最後の機会だ』

**『我の配下に加わらぬか?』

僧侶「…………」




521:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:32:43.26 ID:yqZ4Z2RI0
この僧侶なら魔王軍に加わっても許す




522:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:32:55.58 ID:UW5dTRYB0
僧侶「……」

**『……何を迷う必要がある?』

**『先行きを見定めれば、おのずと賢明な判断は――』

僧侶「うん。僕の答えは変わらないんだ」

僧侶「その申し出を『断る』っていう答えは」

**『!』

僧侶「でも、その理由がはっきりしなくって」

僧侶「僕はなんのために、人間の側につくのかなって」

僧侶「それをずっと考えていたんだけど……」

僧侶「昔のことを思い出して、何となく分かったよ」

僧侶「僕がまだ小さかった頃、神父さんに連れられて散歩に行ったことがあるんだけど」

僧侶「お日様がぽかぽかしてて、風が気持ちよくて、とっても楽しかったんだ」

**『……?』

僧侶「他にも、美味しいものを食べたり、綺麗な風景を見たり」

僧侶「勉強も呪文の鍛錬も自由にできて、勇者と楽しくおしゃべりしたりして――」




526:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:33:33.18 ID:UW5dTRYB0
僧侶「とにかく、僕は満ち足りてたんだ。そして、今だって満ち足りている」

僧侶「そりゃあこの旅で、すれ違いや残念なことも、悲しいこともたくさんあったよ」

僧侶「でも、そういうのも引っくるめて、僕はこの世界が好きなんだ」

僧侶「色んな事を教えてくれて、時に目一杯の幸せを感じさせてくれる、この世界が好き」

僧侶「だから僕は、この世界のために、僕にできることをしたい」

僧侶「だから僕は、戦うよ」

**『……』

**『ならば交渉決裂だな』

**『少しは利口だと思っていたが、常軌を逸するまでに奇人であったようだ』

**『さて……』

**『いま貴様は、「戦う」という語を漏らしたようだが』

**『それが何を意味するのか、理解した上での放言なのだろうな』

僧侶「できれば僕も、無用な争いはしたくないよ。稽古は好きだけど、実際に傷つけ合うのは嫌い」

僧侶「この旅だって、無意味な殺生はしなかったつもりだし、これからもしないつもりだけど」

僧侶「……お前が、僕をすんなり外に出してくれるとは思えないから」




533:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:34:17.38 ID:UW5dTRYB0
**『その通りだ』

**『敵対が明確になったことは元より』

**『貴様がこの先の扉に押し入るというなら、我は阻止しなければならぬ』

僧侶「……」 グッ

**『さて……ところで我は、先刻勇者と相まみえた傷が癒えておらぬ』

**『またあの場から離脱することに、並ならぬ魔力を費やしてしまった』

僧侶「えっ? 勇者と戦ったって?」

**『そうだ』

**『計画が水泡に帰す危険を冒してまで、勇者の前に姿を晒したのは』

**『あの一行の素性を、この目で確かめてみたかったためだ』

**『伝説の武具の威力は、いかなるものであるのか』

**『我を打ち滅ぼそうとする輩とは、どのような顔つきをしているのか』

**『諸々の事情を兼ね、我は勇者共の前に現れた』

**『そして我は……やはり人間は下らぬ存在だと悟った上で、彼奴らに挑み……』

**『ろくに勇者共の戦力を削ぐことも叶わず、敗れ去った!』




542:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:35:10.42 ID:UW5dTRYB0
**『ただしそれは、我が真の姿を伏せていたためだ』

**『我が、寸での場面で矜持を押し殺し、情に駆られなかったためだ』


**の ずじょうに

一対の赤い水晶が ならんだ! ▼


僧侶(! 眼が……浮かんでる……!?)

**『先に述べたように、今の我は困憊しており、魔力も枯渇寸前にある』

**『この姿で戦うとなれば、貴様如きにさえ、遅れを取りかねぬ』

**『ゆえに貴様を葬るには、不本意極まりなくも全霊を尽くすが必然となる』

**『絶望せよ。我の寛大なる招聘を拒んだこと』

**『その目、その耳、その身をもって悔いるがいい――』

僧侶(来る……!)


赤い水晶が あやしいひかりを はなった!


**は ドラゴラムを となえた!!  ▼




548:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:36:03.31 ID:UW5dTRYB0
 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

 

僧侶(! ローブが千切れて……影が伸びていく……!)

僧侶(大きい……どんどん膨れ上がっていく!)

僧侶(どんどん……膨れて……)

僧侶(……あ……ああ……)

僧侶(大き――)

 

*「『グオオオオオオオオオオォォォォォォォォッッ!!』」

 

ビリビリビリ      ビリビリビリビリ  ピシッ
       ビリビリ       ビリ
    ピシッ    ビリビリ      ビリビリビリ
           


    竜王が  あらわれた!!   ▼




552:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:36:37.57 ID:UW5dTRYB0
竜王『我こそは王の中の王、「竜王」である』 ズズズ…

竜王『おろかものめ』

竜王『おもいしるがよい』

僧侶「!」


僧侶は フバーハを となえた!
僧侶を やさしい ひかりのころもが つつみこんだ! ▼

竜王は もえさかるかえんを はきだした!
僧侶は 大ダメージを うけた! ▼


僧侶「うわああッ!」

僧侶(フバーハで軽減したのに、なんて火力!)

僧侶(――今まで戦ってきたドラゴンの魔物とは、大きさも強さも、まるきり次元が違う!)

僧侶(自身の強化を捨ておいてこれだけの力を! これが真の魔王――!)


竜王『グルルルル……』シュウウ…


僧侶「でも僕は……戦うんだ!」




557:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:36:56.63 ID:fEACGIBu0
竜王と一騎討ちとか本物の勇者じゃん

558:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:37:11.75 ID:jfsoTAJH0
竜王様か
だから僧侶もソロプレイだったのか





563:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:37:50.30 ID:UW5dTRYB0
竜王『ククク……久々にこの姿に帰ったが、身体を慣らす必要はなさそうだな』

竜王『むしろ力が漲ってくるわ……もはや何物も恐れはしない』

僧侶「やあああっ!」

竜王『む?』


僧侶の こうげき!
ミス! 竜王は ダメージをうけない! ▼


竜王『なんだそれは?』


竜王は 僧侶を けりとばした! 
僧侶は ダメージを うけた! ▼

僧侶「うわあっ!」 ドシャッ  ゴロゴロゴロ


竜王『何かを秘めているとでも思っていたが……まさかその得物は、本当にただの棒なのか?』

竜王『見たままに突いてくるとは、我への侮辱を通り越して呆れて果てるわ。ククク……』

僧侶「ハァ……ハァ……」

僧侶「まだ……戦いは始まったばかりだ!」




567:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:38:33.70 ID:UW5dTRYB0
僧侶は ピオリムを となえた!
僧侶の すばやさが あがった!

僧侶は スカラを となえた!
僧侶の 守備力が あがった! ▼


竜王『この歴然たる差を前にしてなお、我に楯突くというのか』

竜王『ククク……狂気も度が過ぎれば興があるものよ』

竜王『来るがよい』


僧侶「やああっ!」

僧侶の こうげき!
竜王に 1のダメージを あたえた! ▼

竜王『かゆい』

竜王の こうげき!
僧侶は ひらりと みを かわした! ▼

竜王『ほう、ピオリムか。なかなか見物だ。ククク……そら!』

竜王の こうげき!

竜王の こうげき! ▼




572:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:39:08.80 ID:UW5dTRYB0
僧侶(落ち着いて。攻撃なら、何とかかわせる。落ち着くんだ)

僧侶(この竜王は、他のドラゴンと違って二足歩行)

僧侶(大きいのに小回りが利くし、攻撃を急所にも当てづらい)

僧侶(だからまず……四つんばいに這わせなきゃ!)

僧侶(となると最初に狙うべき部位は……重心のかかっている、足!)


僧侶の こうげき!
竜王に 1のダメージを あたえた! ▼


竜王『効かぬ!』


竜王は もえさかるかえんを はきだした!
僧侶は ダメージを 受けた! ▼


僧侶の こうげき! 
竜王に 1のダメージを あたえた! ▼

僧侶は ベホマを となえた!
僧侶の キズが 回復した! ▼

竜王『ほう……?』




577:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:39:52.77 ID:UW5dTRYB0
竜王『今……攻撃と呪文を同時にこなしたな』

竜王『なるほど。その軽装ならではの特技か』

竜王『確かに回復の合間に攻撃も可能なれば、防戦一方にもならぬ』

竜王『これまで貴様が、数々の不利な戦いに勝利してきた要因は、そこにあるか』

僧侶(そ、そこまで見破られた?)

竜王『だが、分かっておろうな』

竜王『その攻撃も、相手に通じなければ何の意味も持たない』

竜王『無闇に回復し続ければ、徒に魔力を消費するばかり。その魔力もいつかは果てる』

僧侶「……」

竜王『僧侶である貴様が、我に傷を負わせる手段があるとすれば、ただ一つ』

竜王『その生命を賭した自爆呪文――メガンテのみ』

竜王『だが我は早々に、貴様の持ち札をすべて見透かしておる』

僧侶「……!」

竜王『回復呪文、補助呪文、蘇生呪文、バギ系呪文――これだけだ』

竜王『貴様は、我が唯一警戒に値する呪文、「メガンテ」を習得してはおらん!!』




582:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:40:17.78 ID:yqZ4Z2RI0
何この熱い戦闘




585:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:40:36.50 ID:UW5dTRYB0
竜王『……天の定めし勇者でもなければ、伝説の武具すら持たない』

竜王『あまつさえ武装といえるものは、凡愚なる蛮人のそれと何ら遜色もない』

竜王『貴様には勝機どころか、一矢報いることすら奇跡と呼べよう』

僧侶「……」

竜王『そして、大魔王からは逃げられぬ。もとより逃げ場もない』

竜王『この【竜王の間】が、貴様の終焉の地である』

竜王『絶望せよ』

 

僧侶「……」

僧侶「しないよ」

僧侶「僕は最後の最後まで、自分ができることをやるんだ」

 

竜王『――ここまで説き伏せて、まだ抗うか?』

竜王『よかろう。そろそろ興も醒めてきた』

竜王『朽ち果てるが良い』




593:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:41:15.87 ID:UW5dTRYB0
――

僧侶の こうげき!
僧侶は スカラを となえた!

  竜王の こうげき!
  竜王は もえさかるかえんを はきだした!
 
僧侶の こうげき!
僧侶の こうげき!

  竜王は 尾を たたきつけた!
  竜王は はげしいほのおを はきだした!
 
僧侶の こうげき!
僧侶は ベホマを となえた!

  竜王の こうげき!
 
僧侶の フバーハの 効果が きれた!
僧侶の こうげき!
僧侶は フバーハを となえた! 

  竜王は はげしいほのおを はきだした!
 
僧侶は こうげき!
僧侶は ピオリムを となえた!

――




599:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:41:55.36 ID:UW5dTRYB0
竜王(こやつ)

竜王(見かけよりも丈夫なことよ。予想に反して粘りおる)

竜王(致命的な一撃を加えても、二撃目の直前、回復呪文で生傷を癒されてしまう)

竜王(しかも呪文の度に費やしているはずの魔力も、まるで底が見えぬ)

竜王(一体その身に、どれだけの歳月の瞑想、精神修養をかけたというのだ……)

僧侶の こうげき!
竜王に 1のダメージを あたえた! ▼

竜王(ククク。だが)

竜王(いかに持久戦に持ち込もうとも、攻撃手段がただ棒を突くだけではな)

僧侶の こうげき!
竜王に 3のダメージを あたえた! ▼

竜王(!?)

竜王(左脚に違和感が――)

僧侶の こうげき!

竜王(こ、こやつ!)

竜王(一点を集中して攻撃している……!?)




601:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:42:13.10 ID:/P/EBFpX0
ピオリムとスカラが大事なのがわかるSS




603:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:42:27.38 ID:UW5dTRYB0
僧侶「ハァ……ハァ……」

僧侶の こうげき!
竜王に 5のダメージを あたえた! ▼


竜王『グオオオオッ!!』

僧侶「うわっ! ぐうっ……!」

僧侶は ベホマを となえた!
僧侶の キズが 回復した! ▼

僧侶「ハァ……ハァ……よし……」

僧侶(つま先にヒビが入ってきた。もう一息だっ)

僧侶の こうげき! ▼


竜王(……我を足元から切り崩そうというのか)

竜王(馬鹿な。この小僧は、本気で我を討つつもりでいるのか?)

竜王の こうげき!
僧侶は ダメージを うけた! 

僧侶は ベホマを となえた!
僧侶のキズが 回復した! ▼ ――




608:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:42:53.26 ID:jfsoTAJH0
僧侶すげぇな




610:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:42:58.23 ID:UW5dTRYB0
――

僧侶の こうげき!
竜王に 8のダメージを あたえた! ▼

竜王『グオオオッ!?』

    ……ズシン…


僧侶(! 片ひざをついた!?)

竜王『クッ……思い上がるな! 躓いたに過ぎん!』

竜王は たちあがった!
竜王の こうげき!
僧侶は ダメージを うけた!

僧侶「うわあっ!」 ベシャッ  ドサッ

僧侶「……ハァ……ハァ……も、もう少しだ……」

僧侶は ベホマをとなえた!

しかし MPがたりない! ▼

僧侶「!?」

竜王『むっ! ククク……ついにその時が来たようだな』




618:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:43:53.62 ID:UW5dTRYB0
僧侶「まだだよ」

僧侶「僕にはこの、『まほうのせいすい』がある」

僧侶(本当は勇者に渡したかったけど、もう勇者はここにはいない)

僧侶(ここで無駄になるぐらいなら、僕が使う!)

僧侶(少しだけでも魔力を回復して……僕にできることをまっすぐ貫くんだ!)

僧侶(この『ひのきのぼう』のように!)


竜王「させん!」

竜王は よこなぐりに 尾を たたきつけた!
僧侶は 吹き飛び かべにたたきつけられた! ▼

僧侶「かっは! げぼっ」

竜王(直撃した! 手ごたえあり!)

竜王(……!? まだ息があるのか!?)


僧侶「うぐ……まだ……」


 僧侶は     エルフののみぐすりを のみほした! ▼




620:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:43:55.89 ID:FDXbchyl0
困った時の

エ ル フ の の み ぐ す り !




622:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:44:26.37 ID:UW5dTRYB0
僧侶の 魔力は 全回復した! ▼

僧侶「あれ?」

僧侶は ベホマを となえた!
僧侶の キズが 回復した! ▼

僧侶(身体に魔力が満ちてくる……!)

僧侶は スカラを となえた!
僧侶は ピオリムを となえた!
僧侶は フバーハを となえた! ▼


竜王(……エルフの飲み薬!? そのような希少なアイテムを持っていようとは)

竜王(迂闊だった。奴の所持品にまでは、眼を通していなかったか)

竜王(だが……どうやら他の道具は何も持っていないようだな)

竜王(残った物は、粗末な衣服に、革製の帽子に……ヒノキの棒)

竜王(ふん、手間をかけたことすら下らぬ。何ら恐るるに足らんではないか)


僧侶「まだ……まだまだ行ける! 行くぞっ、竜王!」 ヒュッ ヒュッ  ピッ


竜王(恐るるに……足らん!!) ――




626:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:44:59.06 ID:UW5dTRYB0
――――――――

僧侶の こうげき! ▼
ホマをとなえた!
ーハの こうかが きれた! 

――――――

王の こうげき!  ▼
のおをはきだした! 
をたたきつけた!

――――

の こうげき!
うげき!

――

 
竜王(もう)

竜王(どれほどの時が経った)

竜王(なぜ)

竜王(こやつは倒れん)

僧侶「ハァ……ハァ……やああっ!」




630:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:45:33.04 ID:xWhtM7xo0
がんばれ。
僧侶超頑張れ




639:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:46:19.36 ID:UW5dTRYB0
竜王(いくら魔力が回復しても、いくら回復呪文を重ねがけても)

竜王(心身に溜まる疲労は限界のはずだ)

僧侶の こうげき!
竜王に 5のダメージを あたえた! ▼

竜王(それがなぜ幾度も立ち上がり、向かってくる。勝ち目がないにも関わらず――)


僧侶「やああっ!」

竜王に 3のダメージを あたえた! ▼


竜王(一体何が)

竜王(この小僧をここまで駆り立てるのだ)

竜王(この小僧を突き動かしている『欲』は何なのだ)

竜王(知りたい。知らねばならぬ)


僧侶(……動きが鈍くなった?)

僧侶(! 赤い眼が光ってる!)

僧侶(僕の……情報を探ろうとしている……?)




646:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:47:01.73 ID:UW5dTRYB0
竜王(! ――この小僧はっ!)

竜王(名誉も金も、愛すら求めてはいない)

竜王(……信じられぬ……この小僧は俗世に塗れながら)

竜王(『欲』が……ないに等しい)

僧侶は スカラを となえた!
僧侶の 守備力が あがった! ▼

竜王(先刻この小僧は、自身は『満ち足りている』と口走ったが)

竜王(決して虚言ではなかった。この小僧は、その恵まれぬ境遇の中で……)

竜王(あらゆることに満足し、とりとめのない些事に幸福を覚えてきたのだ)

僧侶は ピオリムを となえた!
僧侶の すばやさが あがった! ▼

竜王(そして……愚直に、己の信ずる道を歩んできた)

竜王(後先も考えず、ただ愚直を貫き……)

竜王(こうして今、我の前に立っている)


僧侶は フバーハを となえた!
僧侶を やさしい ひかりのころもが つつみこんだ! ▼




652:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:48:00.28 ID:UW5dTRYB0
竜王(――この小僧は、我にあらがうに差し当たって)

竜王(世の平和秩序のためなどといった、特別な大義を負っているわけではない)

竜王(盲目的な義務感、傀儡的な使命感を抱いているわけでもない)

竜王(この絶望的な状況から、自暴自棄になっているわけでもない)


僧侶「……よし」


竜王(こやつは)

竜王(自身の意志で、ただこの場にて『良かれ』と感ずる行為を推し進めているに過ぎん)

竜王(先々の帰結を主体としておらぬのだ。重きを置くは、むしろ眼前の指針)

竜王(奴の胸中は当面、『勇者に真実を伝える』のみに在り、他意はまるで何もない)

竜王(『良かれ』と思い、目標を逐一見定め、それに向け愚直に走っているに過ぎん。愚直に……)

 

竜王『ならば、その気骨をへし折るまでよ』

僧侶「!」

竜王『聞くがいい、小僧よ。貴様の為そうとしていることは決して叶わぬのだ。なぜなら――』




656:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:48:50.67 ID:UW5dTRYB0
竜王『この【竜王の間】にも、この扉の先にも、出口などないからだ』

僧侶「……えっ?」

竜王『この扉の先は【魔界樹の間】』

竜王『いくら探り歩いても、魔界樹の「根」の他には何もない』

竜王『そしてこの空間は、【竜王の間】と【魔界樹の間】のみで構成されておる』

竜王『階段も抜け道も皆無にして、当然呪文での脱出も不可能』

竜王『「旅のとびら」を閉ざしてしまえば、生身の人間が抜け出す手段はない』

竜王『また、我がこの姿で戦うことを基準としたつくりのために、外壁は超硬度を誇る』

竜王『此処からの脱出も、外部からも侵入も不可能。貴様は完全に孤立しているのだ』

僧侶「……」

竜王『さぁ、己の行動の無意味さを悟ったであろう』

竜王『貴様は人間にしては度を過ぎるほどに、よく戦った』

竜王『幾多の障害にも屈せず、自らの理念を貫いたのだ。ここまで、よくも戦った』

竜王『もう十分であろう。安心して眠りにつくがよい――』

僧侶「…………」




661:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:49:37.12 ID:UW5dTRYB0
僧侶「竜王」

僧侶「ありがとう」

竜王『!?』

僧侶「お前は僕のことを分かってくれた、最後の理解者だよ」

僧侶「こんな僕を分かってくれて、ありがとう。これだけを、死ぬ前に言っておきたかった」

竜王『ふっ……心の整理がついたようだな。良かろう』

竜王『その潔さに免じ、最期は一思いに楽にしてやろう……』

僧侶「違うよ。死ぬ前にっていうのは、『僕が』だけじゃない。お前もだよ」

竜王『……何?』

僧侶「ここから出られないんなら、目的を変える」

僧侶「お前と、魔界樹を倒す」

竜王『!?』

僧侶「倒すのは無理だったとしても、手負いにする」

僧侶「少しでも、後に戦う勇者たちが楽になるように」

竜王『な、何だと……!?』




664:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:50:13.90 ID:+HmoocRj0
だめだから








だめだから




666:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:50:18.74 ID:UW5dTRYB0
竜王『……例え手負いにしたとて、その傷は五年も経てば完治するのだぞ』

竜王『やはりお前のやろうとしていることは、無意味徒労――』

僧侶「お前はそうかもしれないけど」

僧侶「魔界樹は勝手が違うかもしれない」

竜王『!』

僧侶「最初からもしかしたら、って思ってたんだ」

僧侶「僕を頑なに、扉の先――【魔界樹の間】に通させないのは、何か理由があるかもって」

僧侶「例えば、今なら小さなダメージでも、後々の再生に影響してしまうから、とか」

竜王『……』

僧侶「ね。そんな可能性も考えたら、戦うことに意味はある」

僧侶「僕は確かにもうボロボロで、いま立っているのもきついけど」

僧侶「眠りにつくのは、本当に指一本動かせなくなったときだ」

僧侶「僕は最期の最後まで、自分ができることを貫くよ」

竜王『……そうか。ならばもうよい』

竜王『この地の底でどこまでも幻想を追い求め、愚かな終末を迎えるが良い!』




671:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:50:51.30 ID:UW5dTRYB0
――

  竜王は はげしいほのおを はきだした! 
  僧侶は ダメージを 受けた! ▼

僧侶の こうげき!
竜王に 3のダメージを あたえた!

僧侶は ベホマを となえた!
僧侶の キズが かいふくした!▼

  竜王は はげしく尻尾を ふりまわした! 
  僧侶は ひらりと みをかわした! ▼

僧侶の こうげき!
竜王に 3のダメージを あたえた!

僧侶の こうげき!
竜王に 5のダメージを あたえた! 
僧侶の スカラの 効果がきれた! ▼

  竜王は 僧侶を 大きな足で ふみつぶした!
  僧侶は ダメージを 受けた! ▼
 
僧侶の こうげき!
竜王に 4のダメージを あたえた! 

僧侶は スカラを となえた!
僧侶の 守備力が あがった! ▼  ――




673:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:51:13.29 ID:jfsoTAJH0
僧侶頑張れ。超頑張れ




677:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:51:30.76 ID:UW5dTRYB0
――

竜王(なぜだ)

竜王(なぜ折れぬ)


僧侶の こうげき! ▼


竜王(この何の能力もない、ヒノキの棒が)

竜王(幾度も我の外皮を突いてるにも関わらず、へし折れぬ)

竜王(幾度も火炎を浴びせているにも関わらず、燃え尽きぬ)

竜王(折れぬ。ただの棒きれが、折れぬ)

竜王(たかがヒノキの棒の分際で)

竜王(――我に向かってくる!)

竜王(折れぬ。折れぬ!!)


僧侶の こうげき! ▼

僧侶の こうげき! ▼  ――






681:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:52:03.61 ID:UW5dTRYB0
――

僧侶「やああっ!」

僧侶の こうげき!


竜王(――この泥沼の戦いの中で――)


竜王は 3のダメージを うけた! ▼


竜王(――小虫が大樹の葉を食むがごとく――)


僧侶の こうげき! ▼


竜王(じわじわと――)

竜王(しかし確実に――)


竜王は ダメージを うけた! ▼


竜王(我の生命が削られつつある――!!)




685:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:52:21.10 ID:xWhtM7xo0
いっけぇぇぇ!!!




688:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:52:40.09 ID:UW5dTRYB0
――

竜王『グオオオオッ!』 ズシ…ンン…


竜王は 地に前足を つけた! ▼


僧侶「ハァ……ハァ……」

僧侶(やっと……膝をつかせたぞ……これで頭に届く……!)

竜王『貴……様!』

竜王は はげしいほのおを はいた! ▼

僧侶「うああああっ!」

僧侶に 直撃!
僧侶は 大ダメージを うけた! ▼

僧侶「げほっ、かはっかはっ」

僧侶は ベホマを となえた!
僧侶の キズが かいふくした! ▼

僧侶(フバーハもピオリムも効果がきれてた……きつい一撃だったな……)

僧侶(あ……今ので『かわのぼうし』が、完全に燃え尽きちゃった……)





693:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:53:34.12 ID:yqZ4Z2RI0
貴重な装備が!




694:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:53:40.33 ID:UW5dTRYB0
竜王『グルルルル……』

竜王(……あの額の印は……王家の印……)

竜王(『追放者の証』……)

竜王(同族にそこまでの仕打ちを受けながら、なぜ人のために戦える)

竜王(この世の誰一人、お前の奮闘を知りはしないのだぞ)

竜王(天界の目はもちろん、勇者が『伝説の剣』で為していたように)

竜王(他人へ声を届けることも、支援を集めることもできないのだぞ)

竜王(ともに戦う仲間もおらず、まともな武器やアイテムさえ持たず)

竜王(命を捨てるも同然の、無謀な戦いを続けられるのは何故だ。何故だ――)

 

僧侶「うわあああっ!」

竜王『!! く、来るな』

竜王『物狂いの分際が、我に纏うなアアァァ!!』


竜王は はげしいほのおを はきだした!
僧侶は フバーハを となえた!   ▼  ――




702:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:54:15.03 ID:UW5dTRYB0
――――

僧侶(も。もう)

僧侶(魔力がなくなってきた)

僧侶(今度こそ、終わりが近付いてきた)

僧侶(結局、魔界樹までたどりつけなかったけど)

僧侶(悔いはない。僕にしては、よくやった方)

僧侶(そうだよね、勇者――)

 

僧侶「勇者」

僧侶(そっか。僕は……勇者に幸せになって欲しいから――)

 
僧侶は バギマを となえた! ▼

竜王『ぬ!?』

竜王(攻撃呪文? この戦いで初めて見る。だが――!)


竜王には きかなかった! ▼




708:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:55:28.15 ID:UW5dTRYB0
竜王(馬鹿め。この姿の我には、一切の呪文は通じぬ――)

竜王『!?』

竜王(い、いない!? 奴はどこに消えたのだ! !?)

 

僧侶「うわあああぁぁっ!!」

 

竜王『上か!?』

竜王(こやつ、バギマの気流に乗って飛んだというのか!?)

竜王(自殺行為な。自らの呪文で傷だらけではないか!)

竜王(しかも飛びすぎたな。上から降下したところで、まだ距離がある!)

竜王(何もない空中では、軌道を変えられん!)


竜王は 口をおおきく ひらいた! ▼


竜王(至近距離で消し炭にしてやる!)

竜王(これで終いだ!!)




718:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:56:32.72 ID:UW5dTRYB0
僧侶「――!!」 ヒュッ


僧侶は 空きビンを なげつけた! ▼


竜王(なっ)

竜王(これは)

竜王(エルフの飲み薬の)


空きビンは 竜王の キバに あたった!
空きビンは こなごなに 割れた!
破片が 竜王の のどに ばらまかれた! ▼


竜王『ガハッ!? ガフッガッカッ!!』


僧侶は 竜王の あたまに しがみついた!!
僧侶は 片腕を 竜王の 目につっこみ――

僧侶「うわああああああああぁぁぁ!!」

赤い眼球を ひきぬいたっ!! ▼

竜王『グオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』




729:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:57:21.34 ID:UW5dTRYB0
竜王『貴様アアアアアアアァァァァァァッ!!』

竜王は くるったように 頭を ふりまわした!
しかし 僧侶は しがみついて はなれない! ▼

竜王の 爪が 僧侶を おそう!
僧侶は 背中に ダメージを うけた!
しかし 僧侶は しがみついて はなれない!! ▼

 

僧侶(……心臓は分厚い皮で守られてて、突いた所でダメージにならない)

僧侶(首を切り落とすのも、『ひのきのぼう』じゃ無理だ)

僧侶(僕が狙える致命的な急所……それはもうここしかない)

僧侶(ドラゴンの頭の内部と直結している、ここしか!)


僧侶「――あああああああああぁぁぁッ!!」


僧侶は 竜王の 眼窩の 奥深くに 

ひのきのぼうを 突き刺した!! ▼


竜王に 大ダメージを あたえた!! ▼




735:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:57:52.03 ID:yqZ4Z2RI0
すげえええ




738:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:58:02.56 ID:UW5dTRYB0
竜王『グガァアアアアアアアアァァァァァッ

  アアアアア アアア  ァァァァ ァ  

    アアア……  ア…… アアアア……   』


   ズズズズズズ
              ドオォンン……

 

竜王を たおした! 

僧侶は 経験値を 獲得した! ▼

 

僧侶「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

僧侶は ベホマを となえた!
しかし MPが たりない! ▼


僧侶「ハァ……ハァ……危なかった……」

僧侶「勝負に出て……げほっ……正解だった……げほっげほっ!」




742:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:58:32.02 ID:/P/EBFpX0
すげええええええええ
倒した!!!

748:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:59:09.26 ID:jfsoTAJH0
すげえええええ倒した!




749:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:59:10.61 ID:UW5dTRYB0
僧侶「……!」


竜王の からだが 縮んでいく――

竜王は 魔導士の すがたに なった!


竜王『ウググ……お……おのれ……ググ……』

竜王『我の……「眼」を……返せっ……!』

竜王『グググガ……』


僧侶「返さないよ……」

僧侶「これを返したら……ごぼっ……魔力を回復されちゃう……」

僧侶「僕は……げほっ……このまま、先の扉に進むよ……」

   ザッ…   ザッ…    ザッ…


竜王『ま……待て……!』


僧侶は  力を ふりしぼって 
【魔界樹の間】への とびらを 押し開けた――! ▼




754:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:59:46.98 ID:UW5dTRYB0
【魔界樹の間】

僧侶「!」


魔界樹の根が うごめいている
魔界樹の根が うごめいている
魔界樹の根が うごめいている
魔界樹の根が うごめいている
魔界樹の根が ――       ▼


僧侶「これ」

僧侶「この……ダンジョンみたいなもの全部が……『根』?」

 

竜王『ハァ……ハァ……ク……ククク……』

竜王『ハハハハハッ……! どうだ……己の浅はかさが分かったろう』

竜王『魔界樹の「幹」は我が居城を支えるに過ぎんが』

竜王『「根」は、この魔大陸そのものを支えているのだ!』

竜王『歳月を詰めた我が結晶! 例えメガンテを放ったとて、びくともせんわッ!』

僧侶「……」




762:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:00:46.90 ID:UW5dTRYB0
竜王『その満身創痍では、もはや根一本、断つこともできまい』

竜王『苦難の果ての絶望を、その身に思い知ったか! クククク……』

僧侶「……」

僧侶「メガンテなら……さっき覚えたよ……」

僧侶「お前との戦いに勝ったときに……ちょうど習得した」

竜王『!?』

僧侶『そして……僕の魔力も、まだ完全に尽きたわけじゃない。メガンテは唱えられる」

竜王『……ハッ。それがどうしたというのだ』

竜王『貴様がその身を懸けて玉砕しようと、魔界樹の規模に勝りはせん!』

竜王『例え十発、百発のメガンテに包まれようとも、この魔界樹は滅びぬ!』

竜王『それがたった一人の僧侶の、たった一度のメガンテなら、不発も同然よッ!』

僧侶「……」

僧侶「僕はね」

僧侶「『ひのきのぼう』なんだ」

竜王『何……!?』




767:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:01:41.09 ID:UW5dTRYB0
僧侶「この『ひのきのぼう』は」

僧侶「僕が一人旅を始めた頃、お店で買ったただの棒だけど」

僧侶「この過酷な旅で、いつも手元にありながら」

僧侶「結局最後まで」

僧侶「折れることはなかった」

僧侶「魔物を攻撃するときも、そうじゃないときも、真っ直ぐを貫いたからだよ」

僧侶「周りから見たらただの棒だけど、僕を数え切れないくらい、助けてくれた」

僧侶「『ひのきのぼう』はこんなにも強いんだ」

僧侶「……そんな『ひのきのぼう』である僕が」

僧侶「すべての生命力をかけた呪文を、唱えるんだ」

僧侶「十も、百もいらない」


僧侶「一撃だぜ」


竜王『     やめろ』

竜王『やめろおおオオォォォォッ!!』




775:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:02:18.94 ID:P/yTp2eC0
だぜってなんか印象変わるな

781:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:02:53.89 ID:fQzHEz6y0
>>775
最後の虚勢だとおもえばなかなかに深い気もするが




783:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:02:57.06 ID:UW5dTRYB0
竜王『貴様の死に、何の価値がある!?』

竜王『貴様の挺身を知る人間は、誰一人いないのだぞ!?』

竜王『礼を言う者も、称える者も、この世界中を巡っても誰一人いない!』

竜王『それどころか、貴様がもたらそうとする平和で得をする者は、』

竜王『貴様を嘲笑し、唾棄し、忌避してきた、愚かな民草なのだぞ!?』

竜王『真実を知った者が命を賭し、何も知らない者がのうのうと平和を享受する――』

竜王『貴様はそんな理不尽が許せるのかッ!?』

竜王『そんなことのために死に絶えて、本当に満足なのか!?』

僧侶「満足だよ……」

竜王『!?』

僧侶「この世界に居場所を失った僕に……価値はないと半ば諦めかけていた僕に……」

僧侶「最後に、こんな大役が与えられたんだ」

僧侶「ちゃんと僕の命に、使い道があって良かった……」

僧侶「今まで……ここまで生きてきて、本当に良かったよ……」

竜王『こ、この……この狂人めがアアアアァァァァ!!』




788:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:03:36.91 ID:UW5dTRYB0
 

僧侶は ひのきのぼうを むねに あてた ▼


僧侶(これで僕の旅は終わり)


僧侶は ▼


僧侶(幸せな一生だった。嘘じゃない)


メガンテを  ▼


僧侶(ただ心残りは)


となえた   ▼


僧侶(勇者に     


 

 まばゆい ひかりが  あたりをつつみこむ――!




790:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:03:43.70 ID:jfsoTAJH0
やめてくれ………………





793:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:04:14.88 ID:UW5dTRYB0
竜王(な、なんだあの……異常な魔力の収束は!)

竜王(馬鹿な。馬鹿なっ。まさか本当に、魔界樹が破壊されてしまうというのか!?)

竜王(こ、こんな……こんなはずではなかった。何故だ? どこで誤った?)

竜王(天界の奴らには、読み勝っていたはずだった。計画もすべて周到、かつ順調だった)

竜王(それをこの小僧が)

竜王(天の加護もなければ大した血筋でもない、我も天も慮外の存在であった、この小僧が)

竜王(毒沼を渡り、この【間】まで辿り付け、エルフの飲み薬、メガンテ、ヒノキの棒――)

竜王(すべての遇が折り重なったために――)

竜王(我のすべてが――)


竜王『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』


竜王は  くだけちった! 

魔界樹は  くだけちった! 

 
ひのきのぼうは
                くだけちった――!  ▼  ――――




794:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:04:17.28 ID:/P/EBFpX0
うわああ

796:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:04:28.55 ID:+qPADIKQI
終わりか…

800:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:04:56.72 ID:xWhtM7xo0
天恵があると信じてる





806:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:05:16.79 ID:UW5dTRYB0
――――――――――――――――――――

<夜>

【北の城・宴席】

*「では、魔王討伐を祝して」

*「カンパーイ!!」

*「「「カンパーーーイ!」」」

勇者「はは……」

勇者(もう何回目だろ……いい加減疲れちゃった……)

商人「――そこでワシは、その般若の面をつけたのです!」

商人「迫り来る魔物の影を、破竹のごとくバッタバッタと薙ぎ倒し――」

勇者(商人さんは元気だなぁ。魔王を倒す前より活気付いてる)

賢者「勇者様、大丈夫ですか? お顔が優れないようですが……」

勇者「えっ? あぁ、うん、平気だよ」

賢者「無理に付き合うことはないのですよ。何かあったらすぐに仰ってくださいね」

勇者「うん、ありがとう」




811:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:05:49.99 ID:UW5dTRYB0
 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

勇者「!」

*「な、何の音だ?」

*「ゆ、揺れてる……地震だーっ!」

商人「あひぃ!!」

賢者「この振動……ただの地震にしては……」

勇者「みんな、落ち着いて!」

 

 ……ダッダッダッ  ダンッ

戦士「勇者、来い!」

勇者「戦士さん!? 何があったの?」

戦士「すぐに高台へ! 魔大陸に変化が!」

勇者「えっ……!?」






811:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:05:49.99 ID:UW5dTRYB0
 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

勇者「!」

*「な、何の音だ?」

*「ゆ、揺れてる……地震だーっ!」

商人「あひぃ!!」

賢者「この振動……ただの地震にしては……」

勇者「みんな、落ち着いて!」

 

 ……ダッダッダッ  ダンッ

戦士「勇者、来い!」

勇者「戦士さん!? 何があったの?」

戦士「すぐに高台へ! 魔大陸に変化が!」

勇者「えっ……!?」





812:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:06:23.13 ID:UW5dTRYB0
――

【高台】

戦士「あれだ! 暗くて見えづらいが……何かが起きている!」

商人「何かってなんですかな!?」

勇者「あれは……」

勇者「大陸が……沈んでいっている?」

賢者「……そのようですね。険しい山々が、次々に陥没していきます」

賢者「恐らく」

賢者「魔王城が陥落した影響で、大陸を支えていた魔力が途切れたのでしょう」

戦士「そうなのか?」

商人「……ということは、完璧に魔王の圧力がなくなるということですかな!」

*「魔物が減るってことか!?」

*「こ、これで、船も内海に出せるんじゃないか!?」

*「やった、ばんざーい!」

*「ばんざーい!!」





817:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2012/11/27(火) 04:06:56.12 ID:UW5dTRYB0
戦士「新たな脅威の誕生とでも思ったが……どうやら真逆だったようだな」

商人「賢者殿が、魔王城を崩壊してくださったおかげですぞ!」

賢者「いえ、そういうことを言いたかった訳では」

*「賢者様ばんざーい!」

*「勇者様、ばんざーい!!」

*「よーし、ここに酒を持ってこい! あれをサカナに今夜は飲み明かすぜーっ!!」

勇者「……」

戦士「? どうした勇者。ぼんやり眺めて」

勇者「えっ? う、ううん、別に……ただ……」

勇者(どうしてだろう。あれを見ていると……)

勇者(何だか、哀しい気持ちになってくる……)


*「「「ばんざーい! ばんざーい!!」」」


勇者「!」

勇者(そ、そうだ。今のうちにここから抜け出そう……)





821:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:07:29.90 ID:UW5dTRYB0
――

勇者「……」コソコソ

戦士「勇者」

勇者「! な、なんだ戦士さんか」

戦士「宴会を抜け出して、どこに行くつもりだ?」

勇者「うん。ちょっと疲れちゃったから、こっそり家に帰ろうと思って」

戦士「そうか……」

戦士「……」

勇者「? 何?」

戦士「……興味がなければ帰っていいが、少し話しておきたい事がある」

勇者「ううん、聞くよ。何の話?」

戦士「……お前の……。……いや」

戦士「お前に、会わせたい者がいる」

勇者「えっ? 誰?」

戦士「……今は言う時ではないだろう。それに、どこに居るのかも分からんしな」





826:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:08:02.75 ID:UW5dTRYB0
戦士「話は少し変わるが……俺はな、勇者」

戦士「あの魔物が見透かしたように、これまで、ひたすらに名誉を求めてきた」

勇者「……」

戦士「それは自分が、人々の記憶から忘れ去られることを恐れていたためだ」

戦士「死の覚悟は常にあった。しかし、その後のことを考えてしまうと堪らなかった」

戦士「生前に名声を刻まねば、語り継がれる存在にならなければ、不安で仕方なかった」

戦士「今にして思えば、俺も臆病者の一種に過ぎなかったのだ」

戦士「勇者の器など、最初から在り得なかったのだ」

勇者「……」

戦士「……しかし一方で……」

戦士「家族も友も、仲間もおらず……唯一の知己からも忘れ去られた者が、間近にいた」

戦士「その者は静かに笑っていた。だが、この世で真の孤独を知る者と言える者だった」

戦士「俺はその者を探し出すために、数日後に旅に出ることした」

戦士「そしていつかこの町に戻ってくる。その時は、是非その者に会ってやって欲しい」

勇者「……うん、分かった。もちろんだよ!」





833:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:08:46.49 ID:UW5dTRYB0
*「勇者様は、確かこのあたりに……」

♂「戦士様はどこにいった? 血眼で探し出す」

 

勇者「!」

戦士「人が来たようだな」

戦士「ここは俺に任せて、お前はゆっくり休むがいい」

勇者「で、でも」

戦士「皆まで言わんと分からんか」

戦士「不器用な年長が、気遣いぐらいさせろと言ってるのだ」

勇者「えっ」

戦士「ふっ……行け」

勇者「あ、ありがとう、戦士さん」

勇者「おやすみっ!」

戦士「ああ」

戦士「おやすみ……――」





836:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:09:22.39 ID:UW5dTRYB0
――

商人「ふう~、酒が入るとトイレが近くなって適いませんなぁ……」

勇者「あっ」

商人「ん? ああっ、ゆ――」

勇者「しーっ」

勇者「いま、オシノビ中だから。ね」

商人「は、はあ……もう帰られるのですか? 宴はこれからですのに」

勇者「うん、ちょっと疲れちゃった。商人さんはずっと話しっぱなしですごいね」

商人「いいえ、こう見えてワシも結構ガタが来ておりますぞ」

勇者「えっ、そうなの?」

商人「ですが商人は信用第一ですからな!」

商人「もし今夜同席した人がお得意さんになれば、後の商売もやりやすくなるってもんです!」

商人「勇者様の冒険は終わりでも、ワシにとってはここからが船出ですからなぁ!」

勇者「ふうん……やっぱり商人さんはすごいんだなぁ……」

商人「あ、ついでに早めに断っておきたいのですが……」





838:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:09:53.99 ID:UW5dTRYB0
勇者「うん、何?」

商人「ワシはこれから旅で余った資本を元に、まずは社を立ち上げ――」

商人「それを土台に、ゆくゆくは世界を視野に入れて商売をしようと思うのですが」

商人「その折で、勇者様の名を借りる場合もあるやもしれません。よろしいですかな?」

勇者「いいよ。その代わり」

勇者「嘘は言わないこと。誇張もしないこと。そして」

勇者「その他ボクの意にそぐわないことをしたら、すぐにやめること」

勇者「ボクの名前を出すなら、これが条件。いい?」

商人「えっ!? そ、それは……」

勇者「約束だからね」

商人「う、ううむ……勇者様の信を失っては、商人生命に関わりましょう」

商人「その約束、遵守しましょうぞ!」

商人「そしてその上で、世界一の大商人になってみせますぞーっ!」

勇者「ちょっと、声が大きいってっ。……それじゃ、ほどほどにね。おやすみ」

商人「はっ、お休みなさいませーっ!」――





841:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:10:25.27 ID:UW5dTRYB0
――

勇者「ふう」

勇者(やっと家まで辿りついた……)

勇者「!」

 

賢者「勇者様」

賢者「お待ちしておりました」

勇者「賢者さん……」

賢者「失礼ながら、高台より先回りさせて頂きました」

賢者「……このような形になってしまい恐縮ですが」

賢者「魔王を打倒した当日中に、勇者様だけにお伝えしたいことがあり」

賢者「このような機会を窺っておりました。少々のお時間を頂けますか?」

勇者「伝えたいこと……?」

賢者「はい……」

賢者「私の人生をかけた……最初で最後の言葉です」




846:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:10:57.51 ID:UW5dTRYB0
賢者「勇者様。わたくし、賢者は」

賢者「勇者様のことを、心より恋い慕っております」

勇者「……えっ?」

賢者「魔王亡きいま、もはや勇者様の責務は解かれた」

賢者「これから人の世は繁栄され、幸福の賛歌に包まれることでしょう」

賢者「無論、我々にも幸せを享受する権利はあります。いや、なければならない」

賢者「……勇者様」スッ

勇者「えっあのっ、賢者さん?」

賢者「あなたの幸せは、この私が確約します」

賢者「どうかこの私と……結婚して頂けませんか?」

勇者「あ……」

  ドクン ドクン

勇者(賢者さんの顔が……こんなに近く……) ドクン ドクン

勇者(……今まで、いつもボクを気遣ってくれて……)

勇者(とても頼りになった賢者さん……――) ドクン





853:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:11:28.19 ID:UW5dTRYB0
勇者「――――」

 

  ドン

賢者「!?」

勇者「……」

勇者「ご、ごめん、賢者さん」

勇者「ちょ、ちょっとボク、今日は」

勇者「ちょっと今日は、色んなことがあって、疲れてるから」

勇者「返事は……また後日で」

勇者「ごめんなさい」

賢者「……いえ」

賢者「こちらこそ、配慮が至らず申し訳ありませんでした」

賢者「時間はあります。ゆっくり考えられてください。返事は、いつまでも待ちます」

勇者「……うん……それじゃあ……」

勇者「おやすみ……」  ガチャ…           バタン





855:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:12:07.65 ID:/P/EBFpX0
賢者ルート回避!





857:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:12:12.73 ID:UW5dTRYB0
賢者「……」

賢者(あの流れから、突き放されるとは)

賢者(相当心労が蓄積していたか、もしくは……)

賢者(……)

賢者(構わない)

賢者(確かに、想いは伝えたのだ)

賢者(後は……)

賢者(私が、勇者様を幸せにするだけだ。私ならできるはず)

賢者(彼女の笑顔を守るためなら、愚者の名を冠しても構わない)

賢者(勇者様が望むならば、私のすべて、この命さえ、喜んで捧げられる)

賢者(私はずっと勇者様のおそばに付き、近くで見続けてきたのだ)

賢者(私ほど彼女を愛した人間は、この世にあろうか。在り得ない)

賢者(彼女を幸せにする。そこまでが私の生涯に課せられた旅路だ)

賢者(永久の幸せを――必ず勇者様に――……)

――





865:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:12:52.68 ID:UW5dTRYB0
――

【勇者の家】

勇者「はぁ」  ドサッ

勇者(本当……今日は色んなことがあって疲れちゃったな)

勇者(でも明日はまた王様に会いに行って、何かの式に出なくちゃいけないし)

勇者(魔王を倒した後の勇者って、いろいろと大変なんだなぁ……)

勇者「……」

 勇者(戦士さんが会わせたいって言う人って、誰のことかな)

 勇者(旅に出るって言ってるけど、できたらボクも自由になって付いていきたいな)

   勇者(商人さんは、旅が始まる前から終わった後まで働いてて、すごいなぁ)

   勇者(あそこまでの生き甲斐があるってことは、すでに幸せなことなのかもしれない)

     勇者(……賢者さん……あともう少しで……キ、キスするところだった)

     勇者(なんで突き飛ばしたんだろ……賢者さんは悪い人じゃないのに……)

     勇者(単に恥ずかしかったから? それとも……それとも、なんだろ……。……)

勇者「……Zzz……」





868:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:13:23.22 ID:UW5dTRYB0
――――――――――――――――――

――  ――  ――  ――  ――

 

勇者(……あれ?)

勇者(靴はいてる。さっきまで寝てたのに)

勇者(夢? やけに意識がはっきりするけど……)

勇者(ここ、どこだろ。水の中に浮かんでるみたい)
 
勇者「!」

勇者(あそこに誰か横たわってる!)

 

僧侶「――」

 

勇者(……ひどい。この人、傷だらけだ……)

勇者(……あれ?)

勇者(この男の子……どこかで見覚えが……)





875:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:14:27.41 ID:UW5dTRYB0
勇者(ああ、思い出した)

勇者(雪山で会った、一人旅をしてた人だ)

勇者(どうしてこんなところにいるんだろう)

勇者(……こんなにボロボロな姿で)


僧侶「――」


勇者(頭には……帽子の切れ端みたいなのが焦げ付いてるし……)

勇者(『ぬののふく』は……血だらけだし……)

勇者(右手には……『ひのきのぼう』)

勇者(左手に握っているのは……赤い水晶だま?)

勇者(あれ、この水晶も見たことある気がする)

勇者(どこだったかな。何だかとんでもない場所で見た気が……)


勇者は 赤い水晶に 顔をちかづけ


中を のぞきこんだ ―― ▼





878:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:14:58.18 ID:UW5dTRYB0
 

赤い水晶に 僧侶の 真実が 映し出された ▼


勇者「……!?」

勇者「なに……これ……」


勇者の 記憶に 
僧侶の 過去が ながれこんでいく ―― ▼


勇者「……あ」

勇者「ああああ」

勇者「あああああああっ!」

 

勇者「僧侶!!」

 

勇者「お……思い出した……」

勇者「い、今、全部思い出した、思い出したよ!!」





882:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:15:28.68 ID:UW5dTRYB0
勇者「僧侶、起きて! 起きてよ!」


勇者は ベホマを となえた!
しかし 何も おこらなかった―― ▼


勇者「あ、あれ? 夢の中だから?」

勇者「どうしよう、どうしよう。こんな怪我……」


僧侶「……う……」


勇者「!」

僧侶「……ここは……?」

勇者「僧侶!」

僧侶「あ……」

僧侶「やあ」

僧侶「勇者じゃないか」

勇者「……僧侶……!」





884:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:15:46.08 ID:/P/EBFpX0
やっときた………





886:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:16:05.40 ID:UW5dTRYB0
僧侶「よいしょっと。あ、いてて」

勇者「だ、大丈夫……!?」

僧侶「うん、平気」

勇者「本当に? こんな……大怪我して……」

僧侶「? ああ、本当だ」

僧侶「きっと、僕が死んじゃう直前の姿に戻ったんだね」

勇者「……ほ、本当に死んじゃったの? 嘘だよね? ねえ?」

僧侶「あれ。そういえば何で、勇者は僕のこと分かるの?」

勇者「……それ……」

僧侶「えっ? ああ。竜王の眼か」

僧侶「そのまま持ってきちゃったんだ。ははは」

勇者「僧侶……」

勇者「ほんとに……一人で戦ったの……?」

僧侶「うん。戦った」

僧侶「これで僕も、少しは勇者みたいになれたかな」





890:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:16:41.14 ID:UW5dTRYB0
勇者「ああ、僧侶! ボクはバカだ、バカだ!」

勇者「何にも知らなかった!」

勇者「知らないところでこんなことが起きてたなんて、全然知らなかった!!」

勇者「それなのに、偽物の魔王を倒して、いい気になって、浮かれてて!」

勇者「僧侶がこんなにも頑張ってくれてたのなんて、全然知らないで……!」

僧侶「ううん、勇者だって頑張ったじゃない」

僧侶「みんなで、魔界樹の花を倒したんでしょ。僕じゃ勝てなかったかもしれない」

勇者「ううん、全部、全部僧侶のおかげだったんだ!」

勇者「病気だった【東の村】の村長さんが助かって、虹の橋を渡れたのも」

勇者「魔王の城への手がかりが無いとき、【北の城】でオーブの段取りをしてくれたのも」

勇者「ボクが王様の目の前で、伝説の剣を抜き放つことができたことまで」

勇者「全部、全部僧侶が裏で頑張ってくれたからだったんだ!」

勇者「全部……僧侶のおかげで……」

勇者「それなのにボクは、何にも知らないで……」

僧侶「そんなことないよ。勇者だってちゃんと頑張ったから、魔王を倒せたんだよ」





896:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:17:29.79 ID:UW5dTRYB0
勇者「ボクは」

勇者「ボクは僧侶ほど、頑張ってなんかいない!」

勇者「僧侶は、何にも悪いことしてないのに、たくさんたくさん辛い目に遭って、」

勇者「怒鳴られて……馬鹿にされて……追い出されて!」

勇者「それでも不貞腐れずに、神父さんの教えを守りながら、自分の意志を貫いて、」

勇者「ボクを助けるために、たった一人で毒沼を渡って」

勇者「魔王の城の、光の届かない、暗いところまで潜っていって」

勇者「たった一人で、とてもかないっこない相手に立ち向かったんだ!!」

勇者「誰の助けも借りず……たった一人で……」

勇者「……武器だって……ひのきのぼう一本しかなかったのに……」

僧侶「それは違うよ、勇者」

僧侶「『ひのきのぼう』だから、僕はあれだけのことが出来たんだ」

勇者「えっ……?」

僧侶「こんぼうでも、槍でもダメだった」

僧侶「『ひのきのぼう』じゃないと、僕はもたなかったと思う。見て!」





908:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:19:09.89 ID:UW5dTRYB0
僧侶「長い旅だったけど、竜王との戦いが終わっても、折れてないでしょ」

僧侶「それどころかまだまだ使える。見かけより凄くタフなんだ」

勇者「……そうなんだ……」

僧侶「それに軽いから、身軽な行動も取れるし……あっ」

僧侶「攻撃と呪文を、同時にできる技も身に付けられたんだ! 今度教えてあげ――」

僧侶「……あー。それは無理かな」

勇者「……どうして? どうしてなの?」

勇者「帰ろうよ! 一緒に町へ帰ろう!」

勇者「ボクが、皆の誤解を解いてあげる! 追放されるようなことは、してないよって!」

勇者「そしてみんなに、本当の勇者は誰だったのかを、ボクの口から説明するんだ!」

勇者「誰にも文句は言わせない、言わせるもんか、僧侶は本当に世界を救ったんだから!」

勇者「あっ、そうだ、僧侶に酷いことをいった、商人さんや賢者さんにも謝ってもらおう!」

勇者「そうそう、戦士さんが僧侶を探す旅に出るんだ! 無駄足になっちゃうといけないし!」

勇者「だから……」

勇者「帰ろう……僧侶……」





914:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:20:13.55 ID:UW5dTRYB0
僧侶「勇者」

僧侶「ありがとう」

勇者「えっ……」

僧侶「これだけが言いたかったんだ」

僧侶「僕の心残りは、勇者にお礼を言いそびれていたことだったんだ」

僧侶「僕を旅に連れて行ってくれてありがとう」

僧侶「世界のために、魔王を倒してくれてありがとう」

僧侶「そして」

僧侶「いま、何もない僕に、『帰ろう』と言ってくれて、ありがとう」

勇者「そんな……」

勇者「どうしてそんなこと言うの……?」

勇者「これから、一緒に帰るんじゃないの……?」

僧侶「うん……それはできないんだ」

僧侶「僕はもう、死んじゃったから」

僧侶「これが本当に最後のチャンスなんだ」





926:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:21:43.31 ID:UW5dTRYB0
僧侶「僕がメガンテを唱えてから、初めて意識を取り戻したとき」

僧侶「どこからか声が聞こえたんだ」

僧侶「ここまで頑張ったお礼に、一つだけ願い事を叶えてあげるって」

勇者「願い事……?」

僧侶「うん。でも、生き返らせることはできないって」

僧侶「今回の魔王は、完全に自分の手に終えない存在だったから、」

僧侶「一度倒された事実を捻じ曲げることはできない、って」

勇者「……そんな……」

僧侶「だから僕は、『勇者に会いたい』って願ったんだ」

僧侶「勇者には、お礼を言いたかったから」

僧侶「そしたら、死後の世界と、勇者の精神を、少しだけ重ねてあげるって」

僧侶「だから多分僕はいま、勇者の夢の中に出てきているのかもしれないね」

勇者「……夢……」

僧侶「うん。だから勇者が目が覚めたら、また僕のことは忘れているかもしれない」

勇者「そんなのっ、そんなの絶対ダメだよ!」




932:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:22:59.98 ID:UW5dTRYB0
勇者「ボクは……ボクはね、僧侶」

勇者「ボクは僧侶のことを」

勇者「小さい頃から、とても尊敬していたんだ」

僧侶「尊敬?」

勇者「優しいし、物覚えもいいし、神父さんから教わった呪文もすぐに覚えるし」

勇者「だからボクは、少しでも追いつこうと、一晩中呪文の練習をしたり」

勇者「少しでも僧侶に近付こうと、僧侶の口ぶりを真似したりして」

勇者「意地も張ったりしたけど……僧侶は、ボクにとって憧れだったんだ……」

僧侶「そうだったんだ……。……でも」

僧侶「僕にとっても、勇者は憧れだったよ」

勇者「えっ?」

僧侶「とても心が澄んでるし、頑張り屋さんだし、武器の扱いは上手だし……可愛いし」

僧侶「天啓で選ばれるのは、当然だと思ってたよ」

勇者「そんな……」

勇者「そんなことない……」




936:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:23:42.03 ID:UW5dTRYB0
勇者「……あ……」


 勇者の身体の りんかくが ぼやけていく…… ▼


僧侶「そろそろ、お別れの時間だね」

勇者「やだ……いやだ!」

勇者「いやだ!!」

僧侶「勇者」

勇者「こんなのあんまりだよ! 僧侶が、僧侶が可哀想だ!!」

勇者「こんなに頑張ったのに、誰にも褒められないなんて」

勇者「一緒に町に帰れば、一気に英雄になれるのに!」

勇者「それだけのことは、してきたのに!」

僧侶「でも」

僧侶「僕はもう、一度みんなに嫌われてしまってるから」

僧侶「いきなり帰ったら、逆にみんなの重荷になってしまうよ」

僧侶「いいんだ。誰の苦にもならないのが、僕にとって一番だよ」




938:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:24:13.74 ID:UW5dTRYB0
勇者「そんなの関係ない! 関係ないよっ!」

僧侶「勇者」

勇者「一緒に帰ろう! 願い事なんて、知ったことじゃない!」

勇者「ボクが僧侶と一緒に居たいんだ! 一緒じゃなきゃ意味がないよ!」

勇者「帰ろう、ほら、一緒に出口を探そう!」

勇者「引きずってでも、背負ってでも、一緒に城下町に帰るんだ!!」

勇者「それでボクの家に、ううん、神父さんの小屋に帰ろう!!」

勇者「そしてそこで」

勇者「……また……一緒に……」

僧侶「勇者」

勇者「泣かないで、勇者」

勇者「いやだ……やだよう……」

勇者「こんなのやだ……」

僧侶「勇者」

僧侶「ありがとう」




942:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:24:46.30 ID:UW5dTRYB0
勇者の身体が うすくなっていく…… ▼


僧侶「じゃあ、勇者」

僧侶「めいっぱい、幸せになってね」

勇者「やだ……行かないで……」

僧侶「勇者」

勇者「……せ……せめて……」

勇者「……これが最後なら……せめて……」


勇者は 僧侶のもとに ちかづいた

勇者は 

 
やさしく くちびるを かさねた  ▼




僧侶「――」

勇者「――」




950:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:25:34.12 ID:UW5dTRYB0
勇者「僧侶……」

僧侶「うん」

勇者「世界を救ってくれて、ありがとう……」

僧侶「うん」

勇者「最後にボクに会ってくれて、ありがとう……」

僧侶「うん」

勇者「……ありがとう……」

僧侶「うん」

僧侶「勇者も、ありがとう」

僧侶「……それじゃ」

僧侶「さようなら」

勇者「……さ…………うぅ……さ……」

勇者「さよなら……――――

 

   勇者の姿は    かき消えた  ……  ▼




954:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:26:11.98 ID:UW5dTRYB0
僧侶「……」

僧侶「へへ」

僧侶「キスされちゃった」

僧侶「報われたなぁ」

僧侶「最後に、全部報われちゃった。へへ」

 

僧侶「よし」

僧侶「それじゃあ」

僧侶「僕も行こうかな!」

 

僧侶は ひのきのぼうを 手に取り

                 天高く  かかげた!    

                                 ▼

 

END





960:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:26:37.72 ID:oGw6yLcK0


962:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:26:40.25 ID:MUssN74T0
乙です

969:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:26:52.20 ID:dD8Jg/B20
最っ高に面白かった
>>1

994:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 04:27:10.38 ID:/EoVlP0x0
おつ
勇者も真相全部知ったし僧侶も讃えられるだろきっと

僧侶「ひのきのぼう……?」その1   
僧侶「ひのきのぼう……?」その2    




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・無料で女の子と出会ったったwwwwww
[ 2014年04月15日 01:58 ] カテゴリ:SS | TB(0) | CM(1)
こいつは良作
[ 2016/07/23 12:54 ] [ 編集 ]
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